概要

「国語算数理科酵母っ!!」

究極の微生物:酵母
パンを膨らませたり、お酒を作るために使われる、現代社会になくてはならない重要な微生物です。細胞1つ1つが別の生き物で、大きさは0.005 mmしかありません。お砂糖が大好きで、お砂糖を食べて二酸化炭素(パンを膨らませる)やエタノール(バイオ燃料にも利用)を作ってくれます。酵母と我々ヒトとの共通性を外部から見出すことは難しいですが、細胞の生命現象の基本的なメカニズムは驚くほど共通しています。このため、真核細胞のモデルとして基礎研究でも数多く使われています。

我々の研究室では、酵母を材料として、真核細胞の遺伝子・ゲノムの機能解明とバイオテクノロジーへの応用を研究しています。具体的には、皆さんも受けることがあるストレス(高温やエタノールおよび酸ストレス)への生き残り戦略を酵母ゲノムから学び、健康分野など人間社会に役立てることを目指しています。また、遺伝子工学、染色体工学、ゲノム編集などを用いて、役に立つ新しい酵母の開発も行っています。例えば、うま味調味料の原料となる核酸やバイオ燃料となるエタノール、プラスチックの原料となる乳酸などをたくさん作る酵母を開発して、食料や環境・エネルギー分野などで社会に貢献することを目指しています。


ゲノムエンジニアリングとバイオテクノロジー

「ゲノムの自在な操作による細胞育種技術の開発を目指して」

次世代の酵母バイオテクノロジーや生命科学の基盤技術の一つとして、染色体やゲノムを大規模に改変する技術がキーになるとの考えのもと、任意の位置で出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの染色体を簡便に分断できる「染色体の分断技術」を開発してきました。この技術は、これまで困難であった菌株育種を目指したゲノムの再構成やゲノムの安定性や構築原理の解明など、応用・基礎を問わず幅広い利用が可能であり、「ゲノムをデザインする」という微生物育種技術のフロンティアを開拓しました。この技術開発の関連業績により、日本生物工学会第45回斎藤賞、第2回大阪大学総長奨励賞、日本生物工学会第21回生物工学論文賞、大阪大学総長表彰を受けております。CRISPR-Cas9システムなども導入して、本技術により出芽酵母のゲノムの再構成や大規模改変を進め、全く新しいゲノム構成を持つ酵母や物質生産能力が向上した酵母の育種を目指しています。


ストレス適応機構の解明と高度発酵生産システムの開発

「高温や酸ストレスへの生き残り戦略の解明と優れたストレス耐性を示す産業酵母の育種による新しい発酵生産システムの開発を目指して」

酵母ゲノムから、高温やエタノールおよび酸ストレスに対する適応応答を学び、その分子メカニズムや生き残り戦略を明らかにして人間社会で活用することを目指しています。また、発酵生産においては、酵母は高温やエタノール、酸などのストレスを受けますが、そのようなストレスフルな発酵生産環境下でも、酵母の持つ潜在能力を最大限に引き出し産業利用するため、ストレス耐性機能を分子レベルで明らかにし、その高機能化と発酵産業への応用を進めています。これまでに、環境にやさしいプラスチックの原料として注目されている乳酸を効率良く発酵する出芽酵母を開発するため、あまり理解されていなかった酵母の乳酸ストレス適応機構の一端を明らかにし、その高機能化により効率良く乳酸を発酵する出芽酵母の開発に成功しました。この関連業績により、日本生物工学会第22回生物工学論文賞を受賞しました。また、バイオマスが豊富な熱帯地域でバイオエタノール生産が行われていることから、効率的な生産には優れた高温耐性を持つ酵母が必要となります。このため、自然界からこれまでに報告されている中で最も優れた高温耐性を示す出芽酵母を単離し、その高温耐性獲得機構の一端を明らかにすると同時に、耐性獲得に必要な高機能型変異遺伝子も同定しました。さらに、高温耐性・酸耐性・高エタノール生産性を併せ持つ出芽酵母の育種にも成功し、種々の発酵ストレス条件やセルロースを基質とした並行複発酵条件下で優れたエタノール生産収率を示す貴重な実用酵母の開発にも成功しています。優れたポテンシャルを持ちますが、利活用や機能解析があまり進んでいない高温耐性酵母Ogataea polymorohaのストレス適応機構の解明や発酵生産への利用も進めています。


RNA生物工学

「調味料の原料となるRNAの高生産を目指して」

核酸系うま味調味料の原料となるリボソームRNAを食用可能な出芽酵母に高生産させる戦略を開発し、需要が急増している旨味を多量に含んだ栄養価の高い酵母エキス生産酵母の開発に取り組んでいます。


ナショナルバイオリソースプロジェクト酵母事業

「酵母研究の更なる発展を目指して」

酵母研究を促進し一層発展させるためには、酵母菌株やDNAクローンなど研究に利用されるバイオリソースの利活用が重要となります。ナショナルバイオリソースプロジェクト酵母では、論文発表された酵母リソースの収集、保存、提供をワールドワイドに進めており、酵母を利用する研究に役立つ利便性の高いバイオリソースセンターとなるよう活動しています。