大阪大学大学院工学研究科 連携型融合研究組織
細胞製造コトづくり拠点
(Kotozukuri Consortium for Cell Manufacturability)
(平成28-33年度)

 

代表:大阪大学大学院生命先端工学専攻生物工学コース 教授 紀ノ岡 正博

 

  

趣旨

このたび,大阪大学大学院工学研究科の連携型融合研究組織として,平成2841日より5年間,「細胞製造コトづくり拠点」が認められました.携型融合研究組織は,大阪大学大学院工学研究科の独自の取り組みで,従来の学問分野の枠に関わらず,専攻間,部局間,学内外または国内外を含めた融合研究活動を行うことにより,工学研究科がイニシャチブをとる世界トップレベルの研究拠点とすることを目指して,自立・連携型の研究組織として設置するものであります.

その中で,「細胞製造コトづくり拠点」においては,生物化学工学の観点から,新展開産業に対して開発の方向性を明確にし,細胞製造に関する共通および固有の概念・技術を構築するコトづくり拠点を形成することを目的とします.特に,個々のシーズ(幹細胞技術,ゲノム操作技術など)から種々のニーズへの展開に必要な細胞製造技術を構築し,医・薬・農における新産業分野(細胞治療,再生医療,バイオ医薬品,バイオアッセイ,創薬,生殖,畜産など)で,センスの良い人材の創出(ヒトづくり),コアとなる技術構築(モノづくり),実用化を見据えた規制対応(ルールづくり)を同時に実行できる知能集団拠点を形成することで,「コトづくり」を実践し,産・官・学の三位一体で産業を興すことに貢献したいと考えております.

 

細胞製造研究中核拠点の重要性

細胞製造を必要とする新たな産業には,モノづくり,ルールづくり,ヒトづくりからなるコトづくり(社会システムの構築)を意識し,細胞製造性(Cell manufacturability)とバイオプロセスシステムエンジニアリング(BioProcess Systems Engineering, BPSE*のセンスを有する人材により,本産業へ貢献することが重要である.

細胞を使用する製造(細胞治療や再生医療などに資する細胞製造を含む)は,既存の製造概念では,細胞そのものの品質に対する評価が不十分であるため,新たな製造概念構築が急務であり,概念構築を行い実証する拠点形成が,本産業分野の促進につながると考えられる.

 

*バイオプロセスシステムエンジニアリング(BioProcess Systems Engineering, BPSE):一連の生物的イベント(生物プロセス; BioProcess)やその反応場(システム; Systems)を解釈し(知の探求;Science),バイオの力を利用することで,人類の営み(生活,産業活動の維持)に幸せを導くこと(知の利用;Engineering)を目指す学問領域.

 

細胞製造性と固有の概念

製造において,工程(プロセス;加工,反応,形成などを含む)とその環境(場),工程への入力(インプット,原材料など)および工程からの出力(アウトプット,産物,製品など)からなるシステムに対し,アウトプットの質的・量的安定化が重要な課題となる.製造性(製造における種々の変動を考慮する際の製造設計の容易性)の観点から,安定性を損なう変動として,システム対する外乱(無菌環境など)由来の変動,インプットに対する細胞・原材料・資材由来の変動,プロセスの内なる乱れ(操作など)由来の変動,開発時におけるインプットおよびプロセスの柔軟性による変動が挙げられる.

特に,細胞を活用する製造においては,細胞特性を理解し製造性を確立する細胞製造性の体系化が不可欠である.細胞製造性の観点から,細胞自身が,不確定性,時間依存性,時間遅延性(遅発性)を有しているため,プロセスの内なる乱れ由来の変動が無視できないことが多い.さらに,細胞治療や再生医療に資する細胞製造においては,細胞そのものが製品であり,細胞を含む生産物の不確定要素が多い(評価があいまいであることが多い)ため,システム変動に対する個別の評価は,固有の概念構築が要求される.

 

 

アクションプラン

細胞製造コトづくり拠点として,以下の事柄を実践してまいります.
・モノづくりでは,コアとなる細胞製造に関する要素技術を開発し,技術統合された製造プロセスを構築する.さらに,個々のプロセスに対し一貫性をもってシステム化することで,種々のニーズに応じた最適な細胞製造を実現する.
・ルールづくりでは,実用化を見据えた技術開発の促進を目指し,規制対応や国際標準化による環境整備を行う.
・ヒトづくりでは,社会人・学生に対し,細胞製造全般のセンス良い産業人育成(モノづくりとルールづくりを理解できる人材の育成)を行う.

 

こられの実行により得られたプラットフォームの実践として,
1.細胞製造技術が貢献できる種々の新展開産業に対して,将来あるべき姿を描き,そのロードマップ形成,市場規模推定と貢献度を明確にし,必要な「モノづくり」「ルールづくり」「ヒトづくり」の観点から「コトづくり」を進めるブループリントを構築する.
2.ブループリントで描かれたシナリオに対し,産官学の専門家から意見集約を行い,修正し,「ことづくり」の戦略的提言を行う.
3.提言に基づいた「ヒトづくり」「モノづくり」「ルールづくり」を実施し,「コトづくり」をなす.

 

上記の実践を目指し,以下を予定しております.

 

平成28-29年度は,細胞を用いた種々の産業への展開模索を行う.学内外メンバーの拡充を図る.
特に,再生医療領域での細胞製造コトづくり拠点を目指した活動を開始する.
・ヒトづくりとして,細胞製造性の概念の構築,再生医療における細胞製造性の重要性認識
・モノづくりとして,将来の技術的要求事項の洗い出し
・ルールづくりとして,規制並びに国際標準化への展開準備
その際,産官学への働きかけを行い細胞製造に関する知識の共有を目指す.

A.学内研究者のメンバー拡大と交流講演会の開催(オープン行事)

(再生医療における細胞製造(培養)技術に関する講演会を開催し,技術を理解することで新たな製造手法を見出すことに貢献する.)

B.再生医療における細胞製造コトづくり講座(クローズド行事;運営体制が整うまでクローズドで実施させていただきます.)

C.細胞培養技術(基質,培地,細胞)に関するシンポジウム(オープン行事)

(再生医療の培養法と培養エンジニアリングの融合を目指した研究交流の場を設営し,細胞・培地・基質の関係を理解することで新たな培養手法を見出すことに貢献する.)

 

平成30年度以降は,国内外への認識展開を行い,国際的イニシャチブを務める.
他の領域での細胞製造コトづくり拠点のブループリントを用意し,活動の展開を図る.

 

ご登録希望のお伺い

もしご賛同いただき, 「細胞製造コトづくり拠点」に対して,ご登録をご希望される場合は,下記世話人まで,ご氏名,ご所属,ご身分,メールアドレスを記載の上お問い合わせください.
世話人:小川祐樹 (大阪大学大学院工学研究科 特任研究員)
E-mail:
ogawa_yuuki@bio.eng.osaka-u.ac.jp

ご登録者には,オープン行事に関する講演会のお知らせ,活動報告などのご案内をさせていただきます.

(本名簿は,学内報告書(部外秘)に掲載させていただくこととなります)

 

これまでの活動

○第4SBJシンポジウム

日時:平成29526() 10:00-16:00

場所:大阪大学基礎工学部 Σホール

参加者:147

主催:公益社団法人日本生物工学会・細胞製造コトづくり拠点

 

○「幹細胞の培養法・培養工学のためのコンソーシアム」 第1回シンポジウム

日時:平成281015() 13:30-17:00

場所:大阪大学吹田キャンパス 銀杏会館3階ホール

参加者:136 (アカデミア44名,企業92)

主催:幹細胞の培養法・培養工学のためのコンソーシアム

共催:細胞製造コトづくり拠点

 

○第2回 交流講演会

日時:平成28627() 14:40-16:10

場所:大阪大学吹田キャンパス 工学研究科生命先端工学専攻生物工学コース

 サントリーメモリアルホール (C35)

参加者:約90 (外部機関-4名,大阪大学-3名,大阪大学学生および紀ノ岡研メンバー-80)

講演会:Prof. Leidel Sebastian (Group Leader, Max Planck Research Group for RNA Biology, Max Planck Institute for Molecular Biomedicine)

Modified nucleosides in the tRNA anticodon accelerate decoding to promote protein folding and brain development

 

○第1回 交流講演会

日時:平成2847() 14:45-18:00

場所:大阪大学吹田キャンパス 工学研究科生命先端工学専攻生物工学コース

 サントリーメモリアルホール (C35)

参加者:約100 (外部機関-19名,大阪大学-10名,大阪大学学生および紀ノ岡研メンバー-70)

講演会:Prof. Todd C. Mcdevitt (Senior Investigator, Gladstone Institute of Cardiovascular Disease)

                            Engineering the Morphogenesis of Pluripotent Stem Cells