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研究概要

ジャトロファ(Jatropha curcas L.)はメキシコ及び中米原産の落葉樹で、トウダイグサ科に属します。大航海時代以降にポルトガル人によってアフリカに伝わり、そこから世界中の熱帯地域に運ばれて広まったといわれています。動物が忌避することから古くから生け垣として使われてきました。また、種子に多くの油脂を蓄積することから、その油を絞ってランプ用の灯油としても使われてきました。

ジャトロファが燃料作物として本格的に考えられはじめたのは20世紀に入ってからで、日本軍が太平洋戦争中に石油の代替燃料として使用を試みたといわれています。高い油の含量、半乾燥地でも栽培できるという特性、およびバイオディーゼル燃料に適した優れた油質から、今世紀再び燃料作物として注目され、広く研究と栽培が開始されています。しかし、燃料作物としての歴史は浅く野生に近い状態なので、本格的なバイオ燃料の生産のためには、さらなる育種を必要としています。

ジャトロファに限らずバイオ燃料作物の課題は環境負荷を少なくし、また食糧生産と競合しないようにすることです。そのためには植生に乏しく食糧生産に適さないような環境条件でも育つことが望まれます。ジャトロファは乾燥に強い植物ですが、その半乾燥地での生産量は十分ではありません。半乾燥地でも灌漑せずに十分な生産量が確保できるような、より環境ストレスに強い品種の開発が必要です。

新品種の開発のひとつの方法は在来のジャトロファから有用な形質をもつ系統を選抜して育種を行うことです。効率的な育種のためにはゲノム情報の整備とDNAマーカーの開発が必要不可欠です。私たちの研究室ではかずさDNA研究所などと共同でジャトロファのゲノム配列を解読し、現在は有用なDNAマーカーの開発に力を注いでいます。

もうひとつの方法は有用な遺伝子を直接ジャトロファゲノムに導入することにより、有用な形質をもつ形質転換ジャトロファを作製することです。これによって育種に必要な時間を大幅に短縮することができます。私たちの研究室ではこれまで困難だったジャトロファの形質転換法を確立しており、何種類もの形質転換ジャトロファを作製しています。